SSHで複数のGitHubアカウントを使い分ける方法
はじめに
個人アカウントと組織用アカウントなど、複数のGitHubアカウントを使い分けたい場面は、開発をしていると意外と多くあります(あるかな?)。
- 学生で個人用のアカウントと、研究室やサークル用のアカウントがある
- 本業と副業で使い分けている
- 組織のGitHub Enterpriseと個人GitHubの両方を使う必要がある
こうした状況では、1台のPCで複数アカウントをうまく切り替える方法が必要になります。
「HTTPSでもできるのでは?」という疑問について
HTTPSを使ってPersonal Access Token(PAT)やCredential Managerでアカウントを切り替えることも技術的には可能です。ですが、実際に運用してみると以下のようなデメリットがあります:
- トークンの再発行や期限管理がやや面倒(90日ごとに期限切れ問題など)
- キャッシュがうまく機能せず、再認証が必要になることがある
- どのリポジトリがどのアカウントでアクセスされるのか、直感的に分かりづらい
- 特に複数の組織に関わる場合、GUIツールやCLIでの挙動が混乱しがち
SSHのメリット
その点、SSH方式では「どの鍵を使ってどのアカウントに接続するか」を設定ファイルで明示的に切り分けられるため、一度設定すれば安定して切り替えが可能です。GitのリモートURLに git@github-work:
のように書くだけで、対応するアカウントが選ばれます。
特に以下のような人にとって、SSHは非常に有効です:
- 長期的に複数アカウントを使い続ける予定のある人
- ターミナル中心の開発をしている人
- 設定ファイルを使って環境構築を自動化したい人(dotfiles運用など)
今回は、SSHキーと設定ファイル(config
)を活用して、複数のGitHubアカウントを快適に切り替えられるようにする方法を紹介していきます。
前提条件
- Gitがインストールされている
- SSHが使える環境(Windows, macOS, Linuxいずれも可)
- GitHubアカウントを2つ以上持っている
※今回はターミナル(コマンドライン)操作が中心です。
ステップ1:SSH鍵の作成
アカウントごとに異なるSSH鍵を作成します。
1つ目(例:個人アカウント)
ssh-keygen -t ed25519 -C "your_personal_email@example.com"
# 保存先: ~/.ssh/id_ed25519_github_personal
2つ目(例:仕事用アカウント)
ssh-keygen -t ed25519 -C "your_work_email@example.com"
# 保存先: ~/.ssh/id_ed25519_github_work
※Windowsの場合、~/.ssh/
は「C:/Users/ユーザー名/.ssh」にあります。
ステップ2:GitHubにSSH公開鍵を登録
各アカウントのGitHubページにログインし、「Settings > SSH and GPG keys」から、対応する .pub
ファイルの中身を貼り付けて登録します。
ステップ3:SSHの設定ファイルを作成・編集する
SSHの設定ファイル config
を編集します。これは「ホームディレクトリにある .ssh
フォルダの中」にある config
という名前のファイルです。
もしなければ新しく作ってOKです。
# ターミナルで開く例(macOS/Linux)
nano ~/.ssh/config
Host github-personal
HostName github.com
User git
IdentityFile ~/.ssh/id_ed25519_github_personal
Host github-work
HostName github.com
User git
IdentityFile ~/.ssh/id_ed25519_github_work
補足:
Host
は任意の名前でOK(後ほどGitのURLに使います)IdentityFile
は先ほど作成した鍵のパスを指定します
ステップ4:Gitリポジトリに応じた接続先の設定
個人用のリポジトリをクローンするとき:
git clone git@github-personal:your-username/your-repo.git
仕事用のリポジトリをクローンするとき:
git clone git@github-work:your-org/your-repo.git
すでにクローン済みのリポジトリなら、以下でリモートURLを変更できます:
git remote set-url origin git@github-personal:your-username/your-repo.git
ステップ5:動作確認
ssh -T git@github-personal
# → 個人アカウントの名前で認証されればOK
ssh -T git@github-work
# → 仕事用アカウントで認証されればOK
Q&A
Q. SSHでアカウントを切り替えたのに、GitHub上の表示が意図したアカウントになりません!
A. git config
の user.name
と user.email
が適切に設定されていない可能性があります。
SSHキーを使うことでGitHubへの接続は切り替わりますが、コミットに紐づく「誰が変更したか」という情報は別です。
Gitは、各コミットごとに user.name
と user.email
を記録しています。そしてGitHubは、コミットの email
がそのアカウントに登録されているかを見て、アカウントと紐づけています。
解決策
それぞれのリポジトリで以下を設定しましょう:
git config user.name "Your Work Name"
git config user.email "your@work-email.com"
この設定は、リポジトリの
.git/config
に保存されます。グローバル設定(--global
)は全プロジェクトに反映されるので、複数アカウントがある場合は避けた方が無難です。
例:意図しないアカウントでコミットしてしまった場合
- GitHub上に表示されるアバターが個人用のままになる
- コミット履歴が別アカウントに紐づかない
- 組織の活動ログに表示されない