九大医学部情報研の甲斐です。この度、九州大学医学部情報研で主催いたしました「第7回全国医療AIコンテスト」が無事終了いたしましたので、まとめ記事を書かせていただきました。

第7回全国医療AIコンテストとは

2019年から始まって第7回となった医療AIの講演会とコンペティションが一体となったイベントです。医療AIに興味のある学生・医師・社会人が集まって、AIを応用した医療・介護・ヘルスケアの最先端についての講演会と医療データ解析コンペティションを行います。

第7回となる今回は、九州大学医学部情報研が主催を担当しました。本イベントは株式会社iPSポータル主催の2025年度 第2回 iPS細胞ビジネス協議会を兼ねてオンラインで実施されました。

また本イベントは以下の団体・企業様のご支援のもと開催されました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

  • 共催: 株式会社iPSポータル、第25回日本再生医療学会総会、一般社団法人臨床医工情報学コンソーシアム関西
  • 協賛: 大塚電子株式会社
  • 後援: 日本再生医療学会、京都府、京都市、九州大学 データ駆動イノベーション推進本部 健康医療DX推進部門

第7回全国医療AIコンテスト_ポスター-1.png

講演

今回は5名の先生方にご講演いただき、最後にコンテストの課題説明が行われました。各講演についてレポートを掲載します。

AI・データサイエンスがもたらす医学・医療の革新と課題

講演者:川上 英良 先生 (千葉大学 国際高等研究基幹, 教授)

データ駆動型の医学研究の重要性についてご講演いただきました。卵巣腫瘍の手術前診断において、教師なし学習を用いて症例の類似性を分析し、進行がんと同じような領域に配置される予後不良な早期がんの集団を発見した事例が紹介されました。また、心拍の変動といったウェアラブルデバイスのデータから、糖尿病や高血圧といった代謝疾患を検出するデジタルバイオマーカーの研究や、眼底画像の大規模基盤モデルを用いて網膜色素変性症の診断および視力低下の予測を行う事例など、個別化医療の実現に向けた取り組みをご紹介いただきました。

再生医療研究の完全自動化への挑戦

講演者:神田 元紀 先生 (東京科学大学 ロボット科学分野, 教授)

汎用人型ロボット「まほろ」を用いて、職人の技に依存していた再生医療用の細胞培養を自動化する取り組みが紹介されました。さらに、AIが実験計画を立て、ロボットが実行と評価を行う自律的なクローズドループ実験により高い分化誘導効率を達成した成果が示されました。また、将来的なロボット実験センターの構想や、フィジカルAIとAIエージェントを組み合わせて仮説生成から論文執筆までを自動化する、壮大なビジョンも語られました。

先端技術が実現する「より良い医療のかたち」

講演者:大嶽 和也 様 (日本マイクロソフト株式会社 ヘルスケア統括本部)

医療現場での生成AI活用についてご講演いただきました。医療従事者の働き方改革が急務となる中、電子カルテと連携し、症状詳記や退院サマリ、薬歴文章などの医療文書作成を生成AIで支援することで、文書作成時間の短縮を達成している事例が紹介されました。また、複数のAIエージェントが連携して複雑なタスクを処理する「マルチエージェント」について、診断や創薬研究といった場面での将来像についても解説いただきました。

エージェント・フィジカルAI時代の医療・ヘルスケアAI研究開発に向けて

講演者:山田 泰永 様 (NVIDIA合同会社)

ヘルスケア分野におけるNVIDIAの取り組みについてご講演いただきました。推論向けパッケージ「NVIDIA NIM」を用いることで、オープンソースのAIモデルを容易にサービス化できる点などが紹介されました。また、大量の手術動画を学習した「世界モデル」によって、データ拡張や臓器の動きの予測シミュレーションが可能になるという研究や、ロボットシミュレーター「Isaac」と人体モデルを組み合わせて超音波検査の物理シミュレーションと学習を行う最先端の技術動向が示されました。

AIを活用した生命科学実験の自律的最適化 ― ロボティクスと連携した次世代アプローチ

講演者:小澤 陽介 様 (エピストラ株式会社, CEO)

バイオ産業における品質のばらつきや高コストといった課題に対し、ベイズ最適化を用いた独自のAIアルゴリズムを用いて有望な条件を効率的に探索する手法が紹介されました。このAIとロボットを組み合わせることで、ES細胞からNK細胞への分化誘導効率を大幅に向上させ、培養期間を短縮させた事例や、大腸菌を用いたレチクリンという医療原料の生産性を倍増させた事例など、データドリブンな研究開発の成果が示されました。

医療データを用いたAIコンテストの課題とルール説明

講演者代理:甲斐 光 (九州大学医学部医学科5年, Kaggle Expert)

今回のコンテストのテーマが再生医療ということで、人の臓器を模したミニ臓器、「オルガノイド」を用い、「オルガノイドの透過画像からAIで蛍光画像を予測生成する」という問題を出題いたしました。下図の左が透過画像、真ん中が蛍光画像、右がオルガノイドのマスク画像です。コンペの詳細はこちらを参考にしてください。 image.png

本コンペティションには119名が参加登録し、80チームが精度を競い合いました。また、上位1-3位の方には、神戸国際会議場で開催された第25回再生医療学会総会にて解法を発表していただきました。

コンペティション結果

結果は以下のようになりました。

  1. Akima neilus チーム
  2. AcademiX Medical チーム
  3. OCUMIT チーム
  4. dalab チーム

入賞おめでとうございます!!

イベント運営・コンペの反省

イベント運営の点では広報により力を入れるべきであったと思います。Xなどでもっと積極的に発信していればさらにたくさんの方々にご参加いただけたかもしれません。

コンペの点では、モデル使用についてのルールの設定があいまいだったため、参加者を困惑させてしまうことがありました。ルールについてコンペ開催前に十分に吟味することが必要だと感じました。

謝辞

運営メンバーの皆様、顧問の新岡先生、登壇者の皆様、共催・協賛・後援の団体・企業の皆様のおかげで無事イベントを終えることができました。我々に貴重な機会を下さったこと、開催に様々な形で協力してくださったこと本当にありがとうございました。最後に、次回、第8回全国医療AIコンテストへの皆さんのご参加をお待ちしております!